ウラブ岳の月見

 

島へ島へと

ウラブ岳の月見

民宿さきはらは夕方になると出かけていく人があり、しばらくすると帰ってくる人もいた。製糖工場は十二時間交代で、昼夜は一週間に一度は交代する。帰ってきた人は、まず、お風呂に入ってさっぱりし、それから夕食をとる。民宿のおばーは、これら出勤する人のためにと、仕事から帰ってきた人のためにと、二度夕食を出さなければならないということになった。

夕食が終わると、おばーは、一安心するようであった。おばーも昼食は砂糖キビ畑に出てキビ刈りをしているのである。夕食の支度のために畑から少し早く切り上げ、近所のおばーに手伝いにきてもらっていたかもしれないが、満室の客に朝晩の食事を供するのは大変なことである。だが砂糖キビの季節はみんなが頑張る島で遊んでいる人は一人もいない。役場や農協に勤める人は土曜日の午後と日曜日は鎌をもって畑にやってくる。内地からきた学生が海岸でテントを張ってキャンプをしていると、畑に引っ張り込まれる。その翌年のことだが、そんな学生たちを私はたくさん見たのであった。島外からたくさんの若者がやってくる砂糖キビ刈りの季節は、島の人たちにとって楽しみの一面もあるようだった。はじめは他所者(よそもの)に慣れなかった島人も、よそからくる人は結局島を救っているとの認識が広がってきて、そんな変化を受け入れてきたようであった。「ウラブ岳にお月見にいきましょうかねー。今夜満月だから、きれいですよー」

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