離島農業の現実-2

 

島へ島へ島へと

離島農業の現実-2

 

農家に同情はあっても、踏み込むことのできない世界であった。時代の谷間に落ちて翻弄されている。やっと与那国島までやってきたのに働くことができず、何もしないでいるだけでも経費がかかる。少なくとも民宿代は毎日必要なのだ。

製糖工場が操業していないから、キビを刈り取ることはできない。どうにもならないところに追い込えいるのは明らかだ。何もしないでも民宿代がかかるのなら、やれることはないかと考えた。

砂糖キビは刈り倒してから、葉を落とし革を剥き、結束して製糖工場に運ぶ。その順番を変えたらどうかというのだ。まず砂糖キビは刈り倒さず、立っているままで葉を落とし皮を剥き、条件が整ったところで刈り倒そうというのである。そうすれば、あとは刈り倒しただけで、製糖工場に搬入することができる。製糖原料としてのキビは、刈り倒したらできるだけすやかに製糖工場に運ばなければ、糖度が落ちる。畑に立っている砂糖キビを先に葉を落とし皮を剥くというのは、前代未聞のことで、糖度が落ちて原料として品質が悪くなるのは当然である。しかし、援農隊としては遊んでいるわけにはいかない。

現場でそんなジレンマに陥っているのに、援農隊の第二陣の募集があ¥はじまり、すでに東京を出発した。あまりゆっくりしていたのでは製糖の時期が終わってしまうということで、飛行機で与那国島にやってきた。

それでもまだ製糖工場は操業をはじめることはできず、第二陣も葉落とし作業とし作業をやるしかなかったのである。畑では刈り倒せば風も抜けて涼しいのだが、立っている砂糖キビは葉を落としたくらいでは暑い。そして、先の見えないことが、何よりもつらかった。

新聞社から有給休暇をもらって付き添ってきた藤野さんは、東京に帰らねばならなかった。もちろん他のスタッフがいたのではあるが、援農隊の一人一人が離島農業の厳しさを身をもって体験することになったのである。善意だけではどうにもならない。

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