島へ島へと
基地のゲート-2
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ヒッチハイクの私を拾ってくれた三十代
と思われる男は、陽気にしゃべり続ける。私も理解できる英語で話してくれるのである。自分が旅人であることに違いないのだが、私はまるで男の故郷にでもきたかのようだった。それほどに彼は自由そうだった。もちろん私よりもこの街の
ことはよく知っている。
ゲート通りをまっすぐ走っていくと、その名のとおり基地のゲートに行く。
ゲートに近づくにつれ、私には圧力のようなものがやってくる。だが、男は
スピードを緩めることなく、普通に運転して基地の門に向かっていくのだ。私にすれば、基地突入と同じことで、なんとなく悲愴な気分になってくる。
基地の門を警護する兵士は、銃を持ち、ヘルメットをかぶり、武装している。
土嚢が門の前に積んであり、ゲリラにも攻撃されればすぐ戦闘ができるようになっている。一般の市民生活とは緊張の度合いがまったく違い、まさに穏やかな日常の中に戦闘があるのだった。男は運転席の窓を開けると、やあと手をあげただけで、なんということもなく基地の中にはいっていった。身分証明書のようなものがあるはずなのだが、顔を見れば、アメリカ人ということが一目でわかり、いちいち身元を確認する必要もなかったのだろう。そこには共同性とういか、仲間意識というようなものが感じられた。「基地の中を観光しようか」
男は私の顔を見て、得意そうにいった。私はどぎまぎしてしまった。
「いいんですか」
「かまわんさ」
こういって男は走れつづけた。