島へ島へと
砂糖キビ畑で見られる-2
災いは、まだほかにもある。日当いくらで雇ったはいいが、意識的にであれ能力に問題があるからであれ、全然働かないかもしれない。それで一人前の賃金をとるのだとしたら、払うほうも損だし、一生懸命働いている人も、自分のやっていることが馬鹿らしくなる。これは仕事にはかりしれない影響が生じてこよう。
この人間は、悪い病気を持っているかもしれないではないか。病気でその人間だけが働けないのならともかく、周りの人間にうつし、砂糖キビ畑刈りどころではなくなってしまうかもしれない。また大飯喰らいで、もしくは大酒のみで、いくら食べて飲み、どんなに働いてもらっても割に合わないのかもしれないのだ。
暴れもので、まわりの人に暴力をふるったら、秩序が乱れて大変だ。女性達に襲いかかるような人間かもしれない。犯罪を犯して、ここまで逃亡してきたのかもしれない。そのほか悪いことを考えると、次から次と連想されてくる。名前の知らないこの男など、雇いいれないほうが無難というものだ。
一方、砂糖キビ畑の勤勉な働き手となれば、その農家の主人にとっては得がたい富を手にすることになる。よい考えを持つよい人で、まわりによい影響を与えてくれるかもしれない。ほかにも先程もなれべたような悪いことを裏返したらよいことを、次から次やってくれ、はかりしれないよい働きをしてくれるのかもしれないのだ。
まれびとは、災いをもたらすか、富をもたらすかである。どちらの可能性をもある。砂糖キビ畑を手伝って富をもたらしてくれるかもしれないが、もっと大きな災いをもたらしてくれるかもしれず、それがわからない以上、この男には近づかないほうが無難である。
砂糖キビ畑の男は、私を前にして一瞬のうちにこんなふうに考えたのだろう。