基地のフライドチキン

 

島へ島へと

基地のフライドチキン

基地の中は、完全にアメリカだった。まるでカリフォルニアであった。カルフォルニアであった。カルフォルニアにもアメリカでもいったことはないのに、そう思った。沖縄とも、日本のどことも違う。沖縄にいるのに、沖縄とは異なったかぜが吹いているように感じた。

なだらかな起状を重ねた緑の芝の上に、充分な空間をとって白い建物があった。建物はクラブハウスだったり、スーパーマーケットだったりした。私をヒッチハイクで拾ってくれた男がいちいち説明してくれるので、わかったのである。それらの施設を、ゆっくりアスファルト道路が結んでいた。私は、日本国内のどこでも、こんな風景を見たことがなかったのである。

住宅もアメリカ式で、無理のない充分な空間の中に、色とりどりのペンキが塗られてならんでいた。この風景は見たことがあるなと私は考えていたのだが、映画やテレビの中でのことであった。このあたりは少し前は田んぼや砂糖キビ畑だったのだろうか。森もあったろうし、御嶽になっていたかもしれない。しかし、そんな土地の遠い記憶を根底から壊し、風景をまったくつくり変えてしまうことに、私はアメリカ人に対する態度を感じるのだ。運転しながら、男は得意そうだった。もちろんここでは英語が話され、基地の外でも同じなのだがドルが流通している。私はパスポートなしに、彼らの国に連れてこられたのだった。ここの豊かな様子をよく見て、外の貧しい友人たちに話したらいいと、そんなことまでいわれているような気がしたのだった。もちろん私のコンプレックスだったのかもしれない。しかし、どう言おうと、どのようにつくり変えようと、ここは彼らのくにではないのである。

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