墓地を見る

 

島へ島へ

墓地を見る

小型飛行機に乗って食い入るように窓に顔お近づけ、天井からの景色に目を奪われていた私は、さながら鳥にでもなったようである。明るい海を越えていくと、軍艦の形をした島影が見えた。近くに寄り添うような島のない、絶海の孤島といってもよいところだ。飛行機が大型化した現在はまた違うのだろうが、当時は東のほうから島の上空を飛ぶ事が多かったと思う。もちろん風向きによっては進入路は変わる。東からはいると断崖絶壁につづき、墓地になる。亀甲墓である。その時私はその時私は沖縄伝統芸能の亀甲墓のことは知ってはいたが、真上から眺めることもなく、古代の遺跡か何かのように思った。島で生きてきた人々が、幾代にもわたってここに眠っているのだ。

後年、私は与那国行って時間ができると、よくこの墓地に足を運ぶ。珊瑚礁石灰岩を積んで建物のように造った亀甲墓は、中には人が暮らせるほどに大きなものもあり、さながら一つの集落のようである。

知識もなくなりここに迷い込んだら、死者の街のように感じられるかもしれない。大城立裕氏の小説に、「亀甲墓」がある。第二次世界大戦の折、アメリカ軍の攻撃にさらされた人たちが、それぞれの家の亀甲墓に逃げ込み、防空壕のように使うはなしである。死者の街が、死に瀕した人々の逃げ込む場所になったのだ。実際、亀甲墓をそのようにつかうこともあったであろう。「亀甲墓」は大城氏のごとく初期の作品であるが、氏の一つ達成を示している。

与那国島の墓地は普段は訪れる人もなく、聞こえるのは風の音と波の音ばかりである。墓と墓の間に、

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