与那国タイム-2

 

島へ島へと

与那国タイム-2

ようやく姿を現したのは、約束の三十分後であった。与那国タイムの標準一時間半よりは少ないものの、この三十分が重いのである。

「遅いじゃないか。こんな人込みの中で待たされたんだぞ」私は思わず怒ってしまった。「あっ、こっちの人は三十分も待っていられないんだ。気が短いね」のんびりという与那国の人の声を聞き、私は怒るのをやめた。そんなことがあった。やっぱり遅れるのは時間の無駄になることだから、よくない。

夜の与那国、農協主催の打ち合わせ会に話をもどす。主人の大嵩長岩氏は酔って寝てしまい、何もわからない私が代理で出席したのである。与那国タイムのとおりにきちんと一時間半遅れではじまった会合では、まず最初に「どなん」の四合壜と料理が配られるのであった。全島一斉に製糖事業にはいるための、農家と製糖工場の懇親会もかねていた。ヤマトンチューの私がそこにいるのも不思議な具合で、私は何度も誰から問われ、大嵩岩長氏の代理できているのだと説明しなければならなかった。

「大嵩オジーは酔っぱらって寝ているねー。ハアーッ」最後のハアーッというのが、尊敬しているのかあきれているのか、独特の感嘆の溜息なのであった。

農協の組合長が立ち上がると、まわりを見まわしてスピーチをはじめる。代理で出席している私は酔って眠っている大嵩オジーに報告をしなければならないのでボールペンを走らせてメモ帳にメモをとる。これはもちろん私には取材ノートになるのだ。

🔶新鮮な材料を搬入しましょう。刈り取りから搬入まで日数が長くなると重量が低下し、原料も製品も質が悪くなります。

実感のこもった現場の話に、いよいよ私も緊張してきたたのだった。

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