日本の札。

 

島へ島へと

日本の札。

東京のナイトクラブ探訪に、私が案内人としてふさわしくないと気づいたマスターは、一人で歩きだすようになった。新宿の三色メニューのナイトクラブにいった時も、次の店へは自分一人で歩いていった。大体の場所がわかったら、経費のこともあるし、私は行かないほうがよかった。

私が先に下宿に帰って寝ていると、明け方頃にマスターはずいぶん酔って、御機嫌で戻ってきた。「東京はチップの習慣がないねータクシーの運転手にチップやったら、喜んどったさー。あんなに喜ぶのんかねー」マスターはいかにも不思議だというふうにいう。チップはそもそもがヨーロッパかアメリカの習慣で、東京あたりではほとんどない。マスターがあまり驚いたふうにいうももだから、私は問う。「いくらあげたんですか」「これだよ」マスターが財布からだして私に見せてくれたのは、五千円札だった。今の五千円よりも遥かに大金である。

「こんなに・・・・」

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