島へ島へと
ハーバーライトホテル
旅に対する沖縄の人々の解放的な気分も、若い旅人には新鮮だった。夕方近くになって、その日の寝る場所のことが心配になる。日の暮れたところがその日の宿と決め、たとえば港の船着場のテントで夜露をしのんで眠る時、私はその場所をハーバーライトホテルと呼んでいた。テントも持っていない旅人だったから、突然降りかかる雨をさけるためにも、屋根ぐらいはほしかったのだ。
那覇港は軍港という雰囲気であったから、私のハーバーライトホテルは、那覇市ならば離島航路のある泊港であった。ここがやっぱり平和でよく、野宿をする怪しい旅人でも追い出されることはなかった。
平らなところを見つけて近づいてきた男が声を出す。
「なにやっているのさー」
私はしどろもどろになりながら、東京の学生で、無銭旅行をしていて、ここで静かに寝かせてもらっていることを説明する。自分は怪しいものではないといえばいうほど、私は怪しくなってくる。無銭旅行はまったく金を使わないで旅行をするわけではないにせよ、あっちこっちでみんなに迷惑をかけているのだ。
東京からきたんですかー」
男はいう。酔っぱらっている様子だ。私は心細くなって声を返す。
「はい」
「学生さんですかー」
「はい」
「こっちにきて顔を見せなさいねー」