製糖工場-2

 

島へ島へと

製糖工場-2

小さな島であるから、砂糖キビの供給はかぎりがある。製糖工場を通年開けておくと、創業資金や人件費がかかることになり、そもそもが小規模な製糖事業は成り立たなくなる。そこで極限までコストをおさえるために、その年に供給される原料の砂糖キビを計算し、それによって製糖工場を開く期間を決めるのである。
つまり、一年のうち二か月か三か月の間、ふだんは島にいないほどの人が働き手として必要になるということだ。
島には高校がない。そのために中学校を卒業をすると、子どもたちは石垣島や沖縄本島にでていってしまう。仕送りをするのは大変なので、この際一家で移住してしまおうということになる。こうして毎年確実に、島の人口は減っていくのである。その上に、製糖事業のためには、短期間だけ労働力がいる。
そのために援農隊が生まれるのだ。
製糖工場は昼夜は夜二交替制である。民宿でも昼夜交替にすれば、普段の収容員の二倍の人数を泊めることができるのであるが、もちろんそうもいかない。昼夜勤務の人は工場ですれちがうことはあるだろうが、民宿でいっしょにいることはない。昼と夜とは、決まった期間を過ぎれば入れ替わるのである。
製糖工場のまわりは、いつも濃くて甘いにおいがした。昼間は砂糖キビを積んだトラックがはいってくると、トラックごと計りにのって重量を計測し、砂糖キビを降ろした帰りに空荷で再びトラックを計測する。その差額を、搬入した砂糖キビの重量として計測していくのである。後に私は砂糖キビを満載したトラックを運転して、数えきれない回数、製糖工場にやってくるのである。
搬入された砂糖キビは、トラクターで押されてベルトコンベアーののせられ、工場の中にどんどん吸い込まれていく。現れた後、搾られる。ジュースは製糖のほうに、搾り残った部分は燃料にされる。砂糖キビの燃料は、甘やまな香りを立てて燃えているのであった。

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