島へ島へと
仕事を求む-2
「それじゃそこに寄ってみようかねぇ。たのんであげるさー」
親切な男は畑のほうに車を回す。砂糖キビ畑には十人ほどいて、手鎌を振ってばさばさと砂糖キビを倒したり、葉を落として縄で結束したりしている。私を拾ってくれた男は車を降りて畑にはいっていき、主人らしい男と話しだす。砂糖の甘やかなにおいがしていた。しばらく話してから、男は一人で戻ってくるのだった。
「うーん、人で不足で、猫の手も借りたいほど忙しくて、三週間四週間働いてくれるのはつごうがよくて、若くて丈夫そうだから最高だというんだけど、あんたのことがよくわからんというんだねぇ。東京の学生さんと説明したんだけど、住み込みさせなくちゃいけないし、結局あんたのことがよくわからないから雇えないというわけさー」農家の主人のいうこともよくわかる。
私は流れもので、いくら愛想よくにこにこしていたところで、心の中では何を考えているのかわからない。内地の人間ならまして胆の中は見えず、信用できない。農家の主人の態度はとどもるところそういうことだ。
親切な男は近くの砂糖キビ畑を三か所まわってくれたのだが、三か所とも同じ理由で断られた。冷たいというのではなく、内地と沖縄はあまりにも遠かったのである。沖縄の農民と、東京の学生と、こころの回路が結べなかった。
私は仕事が見つからなかった。