石垣の一夜。

 

島へ島へと

石垣の一夜

石垣市は那覇とは違って規模が小さい。歩いていて親しみの持てるところであった。私がいった頃は、登野城には漁港があって漁船がならび、今の離島へのフェリー乗り場の背後は埋め立てて工事中だった。大きなパイプで海底から砂を吸い上げるので、平らな地面には貝殻がいくらでも散らばっていた。
建物のないがらんとした空地が、海岸の一帯にひろがっていた。広い割に誰もいないので、私はそこで野宿をすることにした。寝袋を持っていたから、雨さえ降らなければどこでも寝れることができる。そう思っていた。ところがあまりに広いので横になってもなぜか落ちつかない。下は砂地で清潔で、申し分のない寝所だったはずだ。
私は街のほうにいって段ボールを拾ってきて、小さな家をつくった。最近よく見かけるホームレスの家と同じだ。そうやって狭いところにはいると、落ち着くのであった。寝るために気持ちを集中させるには、漠然と広いところにいては駄目である。
ところが、もうひとつ問題があった。野犬がそのへんを走れまわっているのだ。
三匹四匹と群れになっている野犬は、起きているとそばにやってこないが、こちらが横になっていて安全だと判断すると、意外なほど近くにやってくる。駆け足音が、近づいては遠ざかっていったりする。今にも襲いかかられそうで、段ボールの壁があるから野犬の姿は見えないのではあるが、目が冴えて寝るどころではなくなった。

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