腰の痛さ-2

 

島へ島へと

腰の痛さ-2

目刺のおばさんを送って私は大嵩の家に帰る。泥まみれの作業衣を普段着に着替えて畳の上に横になってから、私は腰に痛みがあることに気がついていた。痛いのは身体の中で、このまま眠ってしまいたいほどである。「お風呂に入って」と
大嵩のおばさんの声が響き、何とか私は起き上がった。
浴室にいっきにシャワーで体を洗ってくると、長岩氏は居間で泡盛を飲みはじめていた。昼間に一杯飲むようにと私はいわれて飲んだ。それから私はふたたびプラスチックのコップに泡盛をくんで生き飲み、同じコップに水をついで飲んだ。
酔いにつらさをまぎらわせて仕事をつづけた。酔いのために身体は熱くて重くなるのだが、それでもつらさは少しは消えた。庭を眺めながら、長岩氏と私は廊下にあぐらをかいて泡盛をもんでいた。生垣の向こうによその家の砂糖キビ畑がある。その向こうにティンダ・バナの崖が見えた。私は言葉もなかったのだが、長岩氏がぽつりという。「きついかね」「はい」私は長岩氏の隣であぐらをかいて腰の痛みに耐えているのだが、気分は爽快である。汗はたっぷり流すにかぎる。
「腹が減っていれば、なんでもうまいよ」長岩氏とぽつりぽつりと語り合いながら、私は泡盛を飲みつづけた。腹が減っていなければ、どんな高価なものでもうまくない。腹も減っていないのに無理にでも美味なのだと思おうとして、うまいものの店を探しまわっている生活もどこかにあったなと、私はそんなことを考えていた。高カロリー高タンパク質を摂りつづけ、身体を壊してしまう。そんなことから遠い砂糖キビ畑には、生き方の原点があると思えた。

 

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