闇のドル買い-2

 

島へ島へと

闇のドル買い-2

那覇最大の大通りの市場通りと交わるほんの小さな広場になったような所に、ワンピースを着たアンマー(叔母さん)たちがたむろしていた。アンマーなら誰でも着ている安物の普段着に必ず手さげ袋を持っていた。その中には商売道具の現金と計算機が入っているのだ。「兄さん、しないねー」何気ないふりをして前を通のだが、必ず私はアンマーに声をかけられる。心の中を読まれているのだ。ゴム草履にTシャツにジーパンで沖縄の人たちと全く同じ服装をし、私のような顔たちをした男もいるはずなのに、いとも簡単に見破られる。一言でも交わそうものなら、もう絶対に逃げられない。偽るつもりはないにせよ、どのようにしても私はヤマトンチューなのだ。アンマーにしてみれば、ポケットの円を米ドルに両替したがっているヤマトンチューなのである。私にしたら、1ドルをいくらで売ってもらえるのかというのがただ問題である。公定レートでは1ドルは360円の固定であった。「355円」尋ねもしないのに、アンマーは1人で呟くようにして言う。「高いよ」こう言って私は隣のアンマーにレートを尋ねる。「355円」みんな同じである。いつも同じ場所で高売りをしているのだから、協定をしているのであろう。私はいわれた通りのレートで20ドル替え、100円儲けるこの100円が貴重なのである。

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