混沌としたサンアイ・イソバ-2

 

島へ島へと

混沌としたサンアイ・イソバ-2

もし稲をつくったり牛を飼ったりする農耕によつて社会が維持されているのだから、サンアイ・イソバのような異常といってもよい強力な統治力は必要とはしない。サンアイ・イソバは原始から文化へと移行しつつある社会の、異貌の統治者であるということができる。

しかも、サンアイ・イソバはカミをコントロールしようとする精神的な祭祀と、現実的な力である軍隊との両義的な存在である。つまり、当時の社会で必要とされていたすべての存在である。つまり、当時の社会で必要とされていたすべての力を有し、万能の存在として、原始から文化的農耕的社会へと移行しつつあった与那国の存在を決定づけていたのである。この過渡期にあり、サンアイ・イソバのイメージは混沌と整合、混乱と秩序、情熱と冷静、このあらゆる矛盾を一身におびているのだが、サンアイ・イソバという存在なのである。このサンアイ・イソバの像を産んだ与那国島の風土の中に、荒神と慈母は同居しているのだある。

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