サンアイ・イソバ

 

島へ島へと

サンアイ・イソバ

サンアイ・イソバの話をする時、与那国の人たちは遥かな憧景を感じるのか遠い目をし、それから嬉しそうな顔をする。祖内を一望のもとに見降ろす隆起珊瑚礁の崖には洞窟があり、サンアイ・イソバはそこに住んでいたということになっている。確かに集落全体を見渡す位置にあり、支配者が住むにふさわしい。
サンアイ村は村の中央部にある。サンアイ村から海岸の祖内にでるためには、絶壁の割れ目は身体を横にしなければ通っていけなかった。サンアイ・イソバが住んでいたとされる絶壁あたりはサン二・ヌ・ダイと呼ばれる。石灰岩であるからあっちこっち穴ができているわけで、これはサンアイ・イソバを慕うあまり、いたるところに痕跡を見る。サンアイ・イソバは巨人ということになる。
そういえば島に伝えられているところによると、巨人がはくような巨大な草履を海に流し、この島には巨人が住んでいると示したということである。交通の道筋である海からは、どんな邪悪なものがやってくるかわからない。そこで悪いものがこないようにと、ここには巨人がいるぞとの物語を流すのである。サンアイ・イソバの話も、物語によって島を守ろうとした人の精神活動の一種なのかもしれない。サンアイ・イソバは母なる存在であり、ただの乱暴者ではない。

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