腰の痛さ

 

島へ島へと

腰の痛さ

午後三時に休憩をとり、またキビ倒しをはじめるのだった。畑の端は他の植物の侵入が激しい。アサガオの蔓が砂糖キビの茎に絡まり、根元を切っただけではキビは倒れなかった。根元を斧で切り離し、空中に浮かんでいるキビを力まかせに引っぱろうとするが、思にまかせない。ただ疲れるばかりである。結局のところ、蔓を鎌でていねいに切った後に、根元を斧で倒すより仕方なかった。アサガオの蔓が絡まっただけで、十倍も疲れるのであった。
夕方五時半になって、大嵩長岩さんの声が畑に響き渡る。「ご苦労さあん」
日を重ねるにつれ、手元が暗くて見えなくなるまで働かなければおいつかなくなるのだが、最初からとばすと息切れがする。二か月もの長丁場のので、ペースの配分を考えなければならない。
太陽は宇良部岳へ山際近くまで傾いていた。私は最初の一日をなんとか乗り切れたなとほっとしながら、道具を片付けて荷台に放り投げ、トラックの運転席にあった。残されていくのは水牛が一頭である。ひろびろとした畑で、切り落とされた砂糖キビの葉をうまそうに食べていた。
「盆と正月が一度にやってきたとおもっているはずだよ」
助手席で長岩氏が笑った。砂糖キビの葉は甘くて、牛や山羊には何よりの御馳走である。そのために、普段の畑は水牛や野放しにしている山羊が侵入しないよう、バラ線で囲っておかなければならない。したがって、切り落とされた葉とはいえ自由自在に食べられるということは、水牛にとっては最高の喜びなのである
目刺のおばさんを送って私は大嵩の家に帰る。

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