雨の砂糖キビ畑-2

 

島へ島へと

雨の砂糖キビ畑-2

 

雨に濡れると砂糖キビは柔らかくなり、手斧を振るたび棘のような粉が飛ぶということはなくなった。倒すにも葉を落とすにも、皮を削るにも、やりやすくなったのだ。

どんなに土砂降りになろうと、はじめは雨合羽を着てやる作業のほうが、炎天下にいるよりずっとましだった。だが汗をかくと、着ている服は濡れ、合羽の内側の身体は暑くなる。晴れれば、ただちに合羽を脱ぐ。するとたちまち服は乾いた土砂降りになっても、その時間がくれば弁当を食べなければならない。このことが精神的につらかった。樹影もない野面の真中で、弁当をひろげて食べる。弁当箱の中に雨が降りこみ、おかずは水漬けになり、飯粒は浮かんだ。身体が芯からこごえてきた。

仕事は過酷に違いないのだが、身体というものは強いもので、つらさに少しずつ慣れてくる。自分にしかわからない強靭さが身についてくるという感覚は、嬉しいものであった。仕事はまだはじまったばかりで、先は気が遠くなるほど長い。当初は一日二日と過ぎ去る日を指折り数えたのだが、何日過ぎ去ったのかわからなくなっていた。

砂糖キビ畑に人が増えたり減ったりするのは、ユイマールという制度があるからだった。人の手を借りた農家は、自分が相手の仕事をして返す。求められると返さなくてはならないので、自分の畑を置いてでも手助けにいかなければならない田植えや稲刈りや砂糖キビの収穫など、短期間にたくさんの人手が必要のなる時期には、隣近所や親せきの間でなんとなく順番が決まり、ほとんど同じ顔ぶれがあちらの家の田んぼ、こちらの家の砂糖キビ畑という具合に、仕事を巡回させる

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