与那国の歴史

 

島へ島へと

与那国の歴史

その時私は援農隊の正規メンバーではなく、ただついていっただけだったから、時間はいくらでも自由になった。援農隊の組織者は東京や札幌で説明会をやり、面接をして、島にいくメンバーを決める。与那国島に援農隊を送り込むが、中心の大きな仕事である。砂糖キビがはじまり、製糖工場が動きだすと、あとの仕事は自動的に進んでいくということになる。

私は翌年援農隊に参加しようと決めていた。そのためにこそ、与那国島について知りたいと思った。実体験の集積が一番よいのであるが、それには時間がかかる。ガイドブックというのではなく、その島に地誌や歴史などが書いてあるししっかりした本がほしい。しかい、たいていはないものねだれのことが多い。

そんな気持ちであいている時間に島を散歩し、島に唯一ある土産店にふらりとはいった。クバ笠や籠がたくさんある中に、ハードカバーの一冊の本が目にとまった。カバーもない、青い単色の上に金の箔押しがしてある地味な本で、「与那国の歴史」池間栄造著と書いてある。私は手にとり、ぱらぱらとページをめくって完全に私が求めている本だということがわかった。さっそく私は買い求めた。

ここには与那国島のすべてが書かれていた。地誌、伝説、上代の遺風、祭事、民謡、年表と、この一冊を読めば、今日的なことはともかく、与那国島のおおよそすべてのことはわかるのである。これだけのことを独力でやりとげた人がいる。

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