仕事が終わった-2

 

島へ島へと

仕事が終わった-2

 

与那国町長が出した案は、自衛隊員のキビ刈り応援で、実際に那覇の駐屯地を訪問し要請した。すると左の陣営がにわかに騒然とし、労働の代表が与那国町役場に押しかける騒ぎになった。戦争を体験した沖縄は、自衛隊の動きに関しては敏感である。

与那国町長は労組にも援農を要請したため、話はいよいよ混乱した。自衛隊は援農のため与那国島に人を派遣することは、結局なかった。そんな細かな状況はわからないまま、援農隊は黙々と作業をつづけた。結局のところ一本ずつ倒していくよりしかたない。

そのうち石垣島や西表島にはいった援農隊が、仕事が終わるや与那国島に手伝いにきてくれた。これが大きな働き手となったのであった。

砂糖キビ刈りは四月十五日に製糖工場も製糖事情を終了した。そこには慣れない援農隊員の、獅子奮迅の活躍があったのはいうまでもない。善意のボランティアが、離島の問題の中に吸い込まれた格好であった。通常でないことが多かった分、一人一人が考え、悩み、その苦しみが血や肉になっていったのである。援農隊は意地で頑張り通したということだ。最後まで働き通したということだ。最後まで働き通した人の数は、五十人ということである。

援農隊に身を投じた若者たちは、それぞれに善意からそうしたのであり、政治の波にここまで翻弄されるとは考えてもみなかった。だがそのことも、過ぎてしまえばよい思い出である。

与那国島では大きな行事があると、牛をつぶして肉塊をゆで、みんなに配る。その場では食べきれないほどの大きさなので、お土産に持って帰ることになる。旅の人である援農隊は、それぞれに世話になった家に肉塊を持っていく。

公民館では牛肉を食べ、泡盛を飲んで、歌い踊って喜びを表現する。この宴会に参加して、援農隊員はようやく大きな仕事が終わったことを実感するのだ。

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