島抜け伝説

 

島へ島へと

島抜け伝説

島は閉鎖された世界である。共同体の構成も濃密である。いわば息が詰まる世界なのだ。そんな世界が居心地がよいという人もいるのだろうが、それはそとの世界を知らないという要素も強いからであろう。

周囲を海で囲まれた島は、船がなければ外にでることもできない。船をつくるためには、森に木があり、造船のぎじゅっが必要だ。また操船をする技術もいり、未知の世界に入っていくという勇気もなければならない。

思いついたからといって、誰でも簡単に島を出ていくことができるというわけではないのである。泳いでいけば身体一つあればよいのだが、命懸けである。黒潮を泳ぎ切って別の島に行く体力と気力がある人は、そんなにいるとは思えない。しかしながら、たとえ孤島であっても現実が苦しければ、その現実から逃れたいという思いを抱くのは当然である。

与那国島には南与那国(ハイドゥナン)に渡ったという、島脱けの伝説がある。池間栄治氏「与那国の歴史」には、与那国島の口癖が記録されている。島の人たちはそれぞれに屋号を持っている。比川の浜川屋、兼盛屋、兼久屋、後間屋の人たちが、人頭税の苦しさから逃れるために、南方にあると信じられている楽土、南与那国に脱出したという。もちろん海上に楽土などないから、うまくいって台湾に上陸できた可能性もあるが、遭難して海に消えたと考えるのが無難であろう

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA