闇のドル買い

 

島へ島へと

闇のドル買い

アルバイトをしてコツコツ貯めた所持金はもともと少なく、それをできるだけ有効に使いたい。そう考えるのは、旅人の常識である。安いというここと、心が踊るということが、よい旅をしているかどうかのバロメーターだ。私が当時していた旅は、安いところが最善だったといえる。

私は日本円を持っていて、沖縄ではドルでなければ使えない。両替をしなければならないので、ここに隙間ができる。当時私は隙間で生きていたといえる。最初は必要な分だけ東京の銀行で円をドルに替えていったが、やがて沖縄で両替したほうが有利なのだと気づいた。闇ドル買いである。

市場通りと国際通りが交差する那覇の繁華街の中心あたりにブラックチェンジの場所があった。周りは人間が多くて、白昼堂々と何をしているかみんな分かっていた。通りすがりの人に「お金の両替所はどこですか?」と尋ねると、その場を必ず教えてくれた。教えるほうも教えられるほうもコソコソした気分はなく、交番の場所を話しているような感じだったのである。

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