安里ユースホテル

 

島へ島へと

安里ユースホテル

那覇でよくユースホテルに泊まった。泊港の近くと安里の二箇所にあり、私は安里ユースホテルに足をはくんだ。ユースホテルの経営者をペアレントと呼ぶ。安里ユースホテルのペアレントは写真で見る武者小路実篤に似た風貌で、縁なし眼鏡をかけ頭ははげていた。「悪いけど、本館が満員なので、別館にいってくれますか」

ペアレントはすまなそうにいう。はじめはこちらも別館に泊まらされるのを気持ちよく思わなかったのだが、二回目からは別館を望むようになった。最初から別館でいいよというと、ペアレントは申しわけなさそな表情をする。

ユースほてるにはいくつかの決まりがある。自分のシーツをもっていかなければならなず、もしなければ、お金を出して借りなければならない。五十円かそのくらいの代金だが、そんな安い金でももったいないのである。アルコール飲料は飲んではならず、午後十時だったか門限がある。ペアレントの目が届く本館ではそれらの決まりは守られたものの、別館は一種の解放区であった。

記憶は朦朧としているのだが、本館は二階建てだったと思う。六畳に三、四人はいるのは普通で、時に六人ということもある。一方、別館は坂の上のほうにある離れで、一般の家を借りたものだ。赤瓦の沖縄風の住宅である。一応蒲団もシーツがあるかどうかなど問われもせず、勝手に寝ればよいのだ。当然、料金は本館よりもずっと安い。

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