島へ島へと
南凕というイメージ
滑走をはじめてから、陸地がぐんぐん近づいて、
私は飛行機に乗っているのだったと改めて感じた。
窓から遠影や海を眺めているときには、自分の力で空を飛んでいるような錯覚を覚えていた。いやそんなことを考えず、自分が海の彼方へと向かっていることにひたすら快感を覚えているのだった。
海の彼方には何があるのか。それは万人に共通する憧れにも似た思いであるだろう。もちろん私は台湾に行ったことがあるし、その先遥かな外国にも行ったことがある。日本国内も歩き回ってきた。日本が暮れたところがその日の宿というような、自由奔放
な旅を繰り返してきたのだ。
与那国島は日本国内の最も遠いところである。南凕
という言葉があるが、これは荘子にいう南方にある大きな海である。亜熱帯の明るい太陽の光が降りそそぐにもかかわらず、暗いイメージがつきまとう。
凕とは、暗い海という意味なのだ。単なるすき通った光に満ちているところとは違う。その暗さの原因は、要するに知らないというところから発するのではないか。与那国島はヤポネシアのはじまりであり
琉球孤のはじまりといってもよい。また台湾の位置する国境のしまである。だがこれは、あくまで地図を見た上での表面的な知識だ。一般的な知識として薩摩藩の人頭税の取り立てがことに厳しく、砂糖が